中国江南地域の服飾について、技術史や社会史の観点から述べた本。
江南とは中国の長江以南のことで、江南地域は蘇州・嘉興・無錫など、下流域の南岸地域をいいます。
全体像
本書は江南地域の、刺繍、絹織物、錦織、タペストリー養蚕と桑の植樹、貿易往来などにわたり、先秦、秦漢魏晋南北朝、隋唐から宋元、元明清、民国の時代区分にそって説明しています。
装飾の説明が少なく、技術面に注目している点でスッキリした本です。清末民初期の上海テーラーをとりあげているのが斬新。洋裁テーラーたちを紅幇、その技術を紅幇裁縫といいます。
民国期
民国期女性の服飾は、本文253頁中の17頁にわたります。文明新装といわれたツーピースが半分。
残り半分が旗袍と婚姻衣装。うち、旗袍は6.5頁にわたって、おもに海派旗袍の誕生と発展。ここでカレンダー・ポスターをとりあげる文献が多いなか、本書の特徴は水彩画2点をとりあげたところ。
旗袍
旗袍を着た藩玉良の自画像と、徐悲鴻の描いた孫多慈の油画像。写真は寧波服装博物館提供の写真3点。
- 単衣の旗袍
- クリップの旗袍
- 刺繍入りの柔軟なサテン長袖旗袍
江南地域なので上海もふくめています。モダンガールや海派旗袍というタイトルで節を設けるのはどうかと思いましたが、本書全体からみたら、妥当な項目えらびだと私は思い直しました。旗袍の歴史をテーマにした本じゃないのですからね。
劉文:江南服飾史
本書の推薦に服装史の大家である華梅さんが書いています。これはいいなぁ。
素材、職人技、キャラクター、イベントなどから、たくさんの画像データを集め、他地域と違う江南地域の特徴を描き出していると褒めています。
華さんがとりあげる本書の特徴は次のとおり。
- 美術、とくに工芸界でよくいわれる北と南のスタイルの違いを衣料の歴史から言及した
- 南部の衣料品と北部の衣料品の違いを把握した(職人技を観点に)
- 実地調査から得たたくさんの生情報を選んだ
旗袍のところで、私は書き忘れましたが、著者の劉文氏は紳士服と婦人服の違いを重視したと、序言で書いています。そういや、民国期の叙述はテーラーに詳しく、中山装などの民国男子服装もふくめて14頁を割いています。
著者は、民国だけじゃなく中国のいろんな時代の紳士服と婦人服の特徴も述べたと書いていますが、中国全土を視野に入れた類書によくある話。
著者のいうほかの特徴は華さんも書いたように、実地調査。何千枚もの写真から何百枚もの写真を選んで、この本の鮮やかさと読みやすさは向上したはずと自負。白黒写真が多いですが、かなり写真が盛り込まれていて、確かに読みやすいです。
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