羅麥瑞編『旗麗時代』:2頁に1点は旗袍を全面紹介

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書籍・図鑑
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『旗麗時代:伊人、衣事、新風尚』は旗袍(チャイナドレス)の展覧会「旗麗時代:伊人、衣事、新風尚特展」にタイアップ刊行したカタログです。

誰の旗袍を展示しているか、気になるところです。

とりあえずリストアップすると、宋美齢、張維禎、趙一荻、連方瑀、兪蕙萱、呉舜文、田玲玲、梁丹豊、黎明柔たちとありますが、私の知っているのは宋美齢だけ…。女性史をもっと勉強すべきでしょうか…。

それはともかく、20世紀初頭からの1世紀のあいだに作られた旗袍をもりだくさん収録しています。

『台湾光華雑誌』によると、編者の羅麥瑞は輔仁大学の「シスター・マリタ・ラウマン」さんのことで、台湾的スタイルの母といわれています(台湾のテキスタイルの母 輔仁大学のシスター・マリタ・ラウマン – 台灣光華雜誌)。

本書の副題「伊人、衣事、新風尚」は「人、衣服、ファッション」くらいの意味です。

このうち「伊人」(人、あの女性)は、とくに姉妹編の『旗麗時代:她們的故事』(彼女たちのストーリー)に詳しく取りあげられています。こちらは旗袍を着たときの家族写真が多いです。

その特別展(特展)は2013年05月11日から2013年12月10日まで台湾博物館にて開催されました。(博物館公式の紹介ページへ

『旗麗時代』は、エッセイや論文をベースに、展示品をたくさん紹介しています。

2頁に1点は旗袍を全面紹介する贅沢さ。

ぱおつ
ぱおつ

博物館や大学の公式サイトや関連サイトをいろいろ検索していると、なんと「輔仁大學織品服裝學系中華服飾文化中心」(中華服飾文化センター)にて展示品を公開していることを発見。

羅麥瑞編『旗麗時代:伊人、衣事、新風尚』輔仁大学織品服装学系、2013年

羅麥瑞編『旗麗時代:伊人、衣事、新風尚』輔仁大学織品服装系所中華服飾文化中心、2013年

日本語表記/原文表記はこちらです。羅麥瑞編『旗麗時代:伊人、衣事、新風尚』輔仁大学織品服装学系、2013年/羅麥瑞主編『旗麗時代:伊人、衣事、新風尚』輔仁大學織品服裝學系、2013年
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目次

目次は次のとおりです。

百年の軌跡

鄭静宜「チャイナドレスの文化的な性質」

1世紀の回顧

何兆華「人と旗袍の巡りあい―チャイナドレスの現代性と歴史性」

蘇旭珺「旗袍の歴史的な脈絡と裁断方法の変遷の分析」

旗麗(きれいな)世界

袁宣萍「綺韻風華―中国近代シルク製品の変遷」

高輔霖「包羅万象—中華服飾文化センター所蔵の旗袍と服地の初調査」

王怡美「中国風と旗袍の経典の変遷」

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本書と特別展の概要

「旗麗時代」という特別展は、女性の観点にたって、チャイナドレスをとおして百年来の人々の喜怒哀楽を訴えています。また、旗袍という衣装の背後にある文化的意義にも迫ります。

そのうえで、チャイナドレスのデザインにも注目している点がかなり特徴的。

台湾でも旗袍の着用者は減っているようです。「かつて、チャイナドレスは華人女性の一番のお気に入り」(同書5頁)と書いてあります。

着用者減少の危機感から、カルチャーとしての再出発や再定着を強く述べています。そのために、斬新な商品の開発を啓発すると。

ぱおつ
ぱおつ

輔仁大学に勤務する知人女性も旗袍を新商品として開発するというプロジェクトを力説していました。普段着として着られるような旗袍を再び定着させたいとのことです(起跑旗袍 即將起跑 by CHICPOW 旗袍兒)。ふだん、彼女はよく旗袍を着ていて旗袍ラブを強く感じるので、定着プロジェクトが無事に進むことを祈っています。

この特別展は台湾博物館と補助仁大学からチームを構成して、輔仁大学織品服装学系の豊富な収蔵品や硏究成果をもとに、展示内容は同館の収蔵品もふくめたとのこと。中国、香港、台湾の女性や家族から力強い協力をえたと書いてあります。この点は、とくに姉妹編『旗麗時代:她們的故事』が詳しいです。

輔仁大学織品服装学系(服装学部)

ここで、輔仁大学織品服装学系(服装学部)の略歴を。

そもそも輔仁大学は、1925年に開校した私立のカトリック大学。厳密には、ローマ教皇庁立大学という初めて聞く系統。

1975年、織物と衣服の保存に着手。

まずは、台湾の原住民と台湾の漢人(客家の閩南)の遺物収集から。その後、だんだん、中国の漢人や少数民族の衣類にターゲットを広げ、とくにミャオ族(苗族)の衣装を重点的に収蔵しています。

1993年、「中華服飾文化センター」を設立。

賛助者の寄付や支援によって、本カタログの刊行頃には(2013年)には、9000件以上の織物・衣服・アクセサリーなどがコレクションされていたとのことです。そろそろ1万点を越えているんじゃないでしょうか…。

旗袍のコレクションが始まったのは、21世紀になった頃。

その前から、旗袍製作の授業はあったそうです。どうやら、馮綺文シスター(修女)がこの大学で教鞭を執りはじめた1979年からのようです。

ぱおつ
ぱおつ

授業でチャイナドレスの製作をするんですよ。かっこいい。

馮綺文さんは中国広東省広州市で生まれ、香港に行ってから、上海出身の先生について旗袍製作のスキルを学ばれました。

シスターの経歴から、中西合壁(中西融合)がスムーズに進んだと想像します。

『旗麗時代:伊人、衣事、新風尚』の英語書名が『QIPAO: Memory, Modernity and Fashion』となっていて、「衣事」に「Modernity」を当てています。「伊人」(人)を尋ねて「衣事」(衣服)の近現代を掘り起こして、いまのファッションへ繋げるストーリーをうまく捉えた表現ですね。

これが教科書だったのかな!?

馮綺文『旗袍製作』中式伝統服装技芸叢書2、輔仁大学織品服装系所中華服飾文化中心、2013年

関連リンク

  • 旗麗時代:伊人、衣事、新風尚特展:台湾博物館の公式サイト内「旗麗時代:伊人、衣事、新風尚特展」紹介ページ。
  • 織品服裝學系:輔仁大学織品服装学系の公式サイト。サイト内に「中華服飾文化センター」(中華服飾文化中心)のコーナーがあって、旗袍関連のデータベースあり。
  • 旗麗時代 – 織品服裝學院:輔仁大学織品服装学院(大学付属の専門学校か?)の公式サイト内。「旗麗時代」をテーマに旗袍製作者(おもにオーダーメード)を尋ねたり、旗袍展覧会の準備や見学などを伝えるブログ。

名媛系の旗袍でいえば、こちらもオススメです。

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