東アジア民族衣装への黄金比の応用

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この記事では黄金比を簡単に説明して、ファッションへの応用と東アジア民族衣装への応用を確認しています。

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黄金比とは

黄金比(Golden Ratio)は黄金分割ともいい、非合理的な数学定数のことです。

簡潔なものではなく、約1.618または約0.618です。

自然、建築および人体で見つけることができます。服のおしゃれには「1対2」を上手く使うのがコツです。

一つの線分を分割して得られる二つの量が黄金比である場合、短い部分と長い部分の比率が長い部分と全体の比率に等しくなります。

世界史的な代表的研究者に19世紀のアドフル・ツァイジング(Adolf Zeising)がいます。

エッフェル塔も黄金比を確認できる建造物の一つです。視覚的に上が2/3、下が1/3に分かれた構造です。
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ファッションへの応用

黄金比は衣服を縫うことや衣服を着ることに関係があります。

ファッションでいう黄金比は最も美しいプロポーションとされる線や面の分割率のことです。

黄金比を適用することで、あなたや顧客のドレスやスカートを自分の体に最も適したものにできます。

上下の組み合わせで、ある長さのスカートを最もよく見せるジャケット丈やスカーフ丈。帽子の大きさに対するドレス丈・ドレス幅。ドレス単体でみれば裾の広がり、床上がり、ベルトやヨークやポケットなどの位置など。

黄金比を適用することで、あなたのドレスやスカートを自分の体に最も適したバランスにしているかどうか。ある長さのスカートを最もよく見せるためには、ジャケットやスカーフなどの長さをどうすべきか。

たとえば、あなたのジャケットの長さが66cmの場合、スカートの目に見える長さは41cmまたは106cmにする必要があります。

あなたの着こなしにぜひ黄金比を使ってみて下さい。

もっとも約1.618または約0.618とは採寸しにくいので、実際はおおむね1対2というシンプルな使い方も多くなされています。

歴史をふりかえると黄金比の見解は必ず分かれます。

でも、多くの人は2/3から1/3の部分が、だいたい審美的に喜ばれることに納得しています。

また、多くの場合に3分の1が2分の1や4分の1よりもうまく機能します。

次の写真を参照してください。あなたのドレッシングはどれに当てはまりますか?

転載元サイトが消滅。A Crash Course in the Golden Ratio – Already Pretty | Where style meets body image

東アジア民族衣装への黄金比の応用

黄金比という人類の慣性は、中華圏の旗袍、日本の着物、朝鮮のチマ・チョゴリ、ベトナムのアオザイなど、東アジア民族衣装の変貌に作用しました。

以下では写真もまじえて、 東アジア民族衣装への黄金比の応用を簡単にまとめています。

次のイラストは俞躍[2014]にある欧米人女性を想定した衣装の設計方法です。

黄金比 : 西洋人の人体にある黄金比(図7)と単の旗袍設計に見る黄金比(図9)。 via 俞躍「民国時期伝統旗袍造型結構研究」設計芸術学碩士論文,北京服装学院,2014年,25頁・27頁。引用にあたって乳頭は消去。

俞躍「民国時期伝統旗袍造型結構研究」設計芸術学碩士論文,北京服装学院,2014年

図7の「西方人体中的”黄金分割”」(西洋人の身体にある黄金分割)は、欧米人女性の裸体にみる黄金比を示します。

図9の「土黄調単旗袍着装示意図」は、その裸体に土黄色地(茶色または黄土色の生地)の単旗袍を着せたときの理想図です。

「単旗袍」というのは1枚の生地(布)を使ったもので裏地が無く、単衣や単といいます(いずれも「ひとえ」)。逆に裏地の付いた生地(布)は二重(ふたえ)または袷(あわせ)といいます。

この図のモデルの身長は165cmで、ウェストの一番窪んだ細い部分(人体腰線)は足底から102cmの所にあります。

この部分をさらに上に見せる姿勢、もっと簡単にいえば上半身を短く見せ、脚を長く見せる姿勢が分かります。

図9の赤線は図7で想定されたモデルが最も綺麗な線を見せると想定される旗袍の設計線(設計図)です。旗袍の裾底から97.5cmの所(旗袍腰線)は人体腰線から4cm~5cmほど上に来るように図示されています。

黄金比をつかって脚を長く見せる

これら2つの図で想定されている旗袍は中華民国期(1912~1949年)の中国でたくさん制作・着用されていたものです。

旗袍の場合

中華民国期は単に民国期と呼ばれることが多く、この時期の旗袍は民国旗袍(民国期旗袍)とよく呼ばれます。

次の写真は一例です。

民国期旗袍の一例(海派と呼ばれる上海を中心とした先端的な旗袍の例で、黄金比 を反映してウェストが高く見えます。) via 民国海派旗袍赏:旗袍女郎_cniff (「このウェブサイトを訪れるとあなたのコンピューターを損なう恐れがあります」「このページは Brave によってブロックされています」などのメッセージが出るためリンクは貼りません。アドレスは以下。http://cniff.com/read/919654103/)

この写真の旗袍では腰線がかなり上に設計されています。

スリットから脚がちらちら見えるため、脚が強調され長く見えるわけです。チャイナドレスの特徴にチラリズムを考える人が多い理由がこれです。

さて、旗袍だけでなく、日本の着物、朝鮮のチョゴリ、ベトナムのアオザイにも上半身を短く見せ、脚を長く見せる工夫が凝らされています。

この現象はだいたい20世紀になって出てきました。

着物の場合

日本の着物は20世紀になって帯の上端が乳房の直下辺りまで上昇しました。

同じく朝鮮のチマ・チョゴリでもスカート(チマ : 치마)の上端が乳房の直下辺りまで上昇しました。

チマの上端が腰線に当たることは言うまでもありません。

一例に着物の帯の位置について、2つの写真で確認します。

1つ目の写真は、イギリスの写真家、フェリーチェ・ベアト(Felice Beato)が1865年に写したものです。

帯が腹部にあるため、ウェスト・ラインが低く見えます。 via 幕末・明治期 日本古写真メタデータ・データベース-[レコードの表示]

次の写真は撮影者不詳、現代の色留袖です。

帯が上方で固定されることによってウェスト・ラインが高くなっています。 via 初詣の着物、既婚者と未婚者で違いは?格付け、マナーを守って既婚女性に相応しい着物を | 春夏秋冬。

この2枚の写真について、首元からの距離や乳房下からの距離に注目して比べて下さい。

帯が腹部から胸部へ上昇していることが分かります。

アオザイの場合

最後に、ベトナムのアオザイを写真で確認しましょう。

ベトナムの民族衣装 アオザイ Vietnamese Dress via http://imgur.com/a/yjiVm

アオザイは旗袍と似ていて、上衣と下衣の連なったワンピース衣服に腰線を発生させるという姿勢です。その上でスリットをお尻より上にまで入れて、ズボンや脚部をさらに目立たせています。

そのため、アオザイとズボンには対照的な色を配置されることが多いです。

要約

このページでは写真をまじえて、 旗袍、着物、アオザイなど、東アジア民族衣装の変貌の一つに黄金比が応用されていることを確認しました。

東アジア民族衣装への黄金比の応用が、さりげなく根深く浸透している様子がお分かりになられたと思います。

黄金比を使うと衣服のウエスト・ラインが上がります。脚を長く見せるだけでなく、かなりスリムにタイトに着ることになります。

この現象を旗袍の洋服化和服の洋服化といいます。

詳しくは次の記事をご参照ください。

あと、本家ヨーロッパにもファッションへ黄金比を使った例がたくさんあります。

わかりやすい例を一つ挙げておきます。

アントニオ・カスティーヨのイブニング・ドレス(外部リンク)

 

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この記事の著者
ぱおつ

旗袍好きの夫婦で運営しています。ぱおつは夫婦の融合キャラ。夫はファッション歴史家、妻はファッションデザイナー。2018年問題で夫の仕事が激減し、空きまくった時間を旗袍ラブと旗袍愛好者ラブに注いでいます。調査と執筆を夫、序言と旗袍提供を妻が担当。

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