文化大革命によって旗袍は概ね禁止され、上半身部分をチャイナ・ブラウスにして、下衣にズボンをはいたツーピースが普及しました。
文革期農村の男女を題材にしたダイ・シージエ(戴思杰)監督の映画「小さな中国のお針子」(巴爾扎克与小裁縫)では、ツーピースのチャイナ服が登場します。
このページでは、旗袍と構成要素が似ているチャイナ・ブラウスをご紹介します。
結論では、チャイナ服(上衣)と旗袍との関係をまとめます。
映画「小さな中国のお針子」のチャイナ服
まずは、ツーピースの全体像。
上下とも薄い赤色の生地です。上衣は緩いAラインのチャイナ・ブラウスで長袖、下衣はズボン。
ブラウスの腰元あたりにスリットが入っていて、それを留めるチャイナボタンが少し見えます。
このチャイナブラウスをくわしく見てみます。
スリットをのぞいて、旗袍の構成要素4点のうち、立領、大襟、チャイナボタンを確認できます。
まず、低めの立領がゆっくりY字になっています。さすがに領が高ければ労働に不向きですから文革のバッシング対象。1930年代上海や1960年代香港のようなわけにはいきません。
パイピングは白色で、同色のチャイナボタンが首と脇あたりについています。大襟は斜めに作られています。ちなみに、このブラウスは平肩連袖。
山中を歩く先ほどの場面ではブラウスの裾にスリットが入っていました。
はっきりとスリットを写した場面がこちら。チャイナボタンもバッチリ。
大襟からおりてきたパイピングとチャイナボタン。スリットが入っていて、まさにミニ旗袍。
このブラウスは臀部を覆いきらない丈なので、さすがの露出度前回のコスプレイヤーたちも、このブラウスだけでは、チャイナドレスコスには踏みこめません。
もとい、実際、ブラウスといっても、旗袍の構成要素をおさえていたものも多く、チャイナ・ブラウスと旗袍はかなり類似性がありました。
このチャイナ・ブラウスは後ろからみると、けっこう立領がしっかりしています。
別のブラウスを見てみましょう。
低い立領は確認できますが、大襟とチャイナボタンがよくみえません。ちなみに、このブラウスも平肩連袖。
アップにされた場面からは、チャイナボタンが首元につけられていることがわかります。生地と同色・同柄です。
平肩連袖は上肢運動(腕の動作)に向いています。この点は、平肩連袖と斜肩接袖の違いを旗袍の着装実験から検証した記事をご覧ください。
ちょっと休憩。のどかな場面を。
男性は休憩になりませんでしたね。
3つ目のブラウスにうつります。
このブラウス、中国風か西洋風かどちらかというと、西洋風。つまり洋服(西服)です。
このブラウスはバッシング対象にならなかったのですね。資本主義文化の典型にも思えますが…。
折領で、前にあわせる対襟。袖は少し盛り上がったマトン・スリーブ。この袖は接袖(セットイン・スリーブ)の一種ですから、あえてルーツを分ければ、バリバリの洋服です。
最後は旗袍風の対襟ブラウス(ジャケット?)。
立領とチャイナボタンとスリットの3点は旗袍の構成要素。大襟が対襟になっている点だけ違います。緩いAライン。
結論:チャイナ服と旗袍の関係
今回は、映画「小さな中国のお針子」から、ブラウスやジャケットを中心にチャイナ服を見てみました。
1点目や2点目のブラウスで確認したように、チャイナ服には旗袍と基本構造がまったく同じものがあります。もちろん、3点目(洋服)や4点目のように、構造がまったく違うか、少し違うかという上衣もありますが。
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