宋慶齢をはじめ上海の著名女性たちが着た60点の海派旗袍(上海旗袍)を収めたカタログ(図録)です。
上海宋慶齢故居(上海宋庆龄故居)にて2016年8月31日に購入。
宋路霞『上海名媛旗袍寶鑑』の概要
1人あたり2~6ページを割き、各女性の略伝を中国語繁体字と英語で綴っています。
女性たちの持っていた旗袍にも多くのページが割かれ、全体像と拡大像が表示されています。拡大写真は1ページを丸ごと使っているので、旗袍らしさを形作っている縁取り(パイピング)、立領(たてえり)、大襟(だいえり)も十分に鑑賞できます。
また、戦前の海派旗袍から戦後上海の旗袍までが集められているので、平連袖と接袖のいずれも楽しめますし、接袖にはダーツの入った旗袍も拡大写真で見られます。さらに、旧型の平連袖にもXラインといえるものもあったことが確認でき、貴重な旗袍の図録になっています。
ただし、旗袍形態そのものの説明はありません。
戦前期上海マダムたちの旗袍
本書に収録された旗袍はかつて上海マダムだった女性たちが提供したものです。彼女たちは中国の伝統に挑戦し、 世界的な教育水準を受けた女性たちが多くいます。彼女たちの旗袍スタイルには彼女たちの考え方が反映されています。
現代の中国人女性とは異なる感性をもって旗袍を身に着け、次世代にも影響を与えました。20世紀初頭に上海マダムたちが着用した旗袍は、現在の中国ではほとんど見られません。この本では、米国、カナダ、日本、シンガポール、香港から集められた60点の作品が紹介されています。
次の写真は本書冒頭を飾る宋慶齢(孫文・孫中山の妻)の旧居(上海宋慶齢故居)で写したものです。この重厚な旗袍も本書に収録されています。
なお、宋慶齢の妹で蒋介石の妻だった宋美齢も2人目に収められています。
収録名媛と目次
収録された名媛は以下のとおりです。
〔前言〕、第1章〔絶代風華〕宋慶齢主席、宋美齢女士、張楽怡女士、呉貽芳博士、呉健雄博士、趙四小姐(趙一荻)、厳幼韻女士、貝蒋士雲女士、顧菊珍女士、楊雪蘭女士、張幼儀女士、唐瑛女士、牛恩徳博士、夏夢女士、王映霞女士、第2章〔名門佳麗〕顧湄女士、徐景淑女士、李傢晋女士、区麗珍女士、栄卓如女士、紀輝嬌女士、盛範頤女士、任芷芳女士、彭菊影女士、張敬女士、呉盈鈿女士、週素瓊女士、蕭嘉玲教授、席与時女士、週静慧女士、張粋文女士、呉珮琪女士、劉蓮華女士、譚韻女士、応惜芳女士、呉珮芬女士、貝如斯女士、沙聶恵珍女士、詹潔梅女士、唐陸夢懐女士、〔後記〕。
序文より
旗袍は中国の伝統的な衣装文化の宝庫です。上海スタイルの旗袍はスタイルの本質です。上海の有名人の旗袍は、中国スタイルの後継であり、素晴らしい上海スタイルを示しています。
この本は、上海の有名人が半世紀以上にわたって衣装の美学に対する理解と願望を反映し、着用した60枚のチャイナドレスをまとめたものです。
これらのチャイナドレスは素材や宝石で飾られ、カラフルで、豪華で、生地やスタイルはさまざま。テキスタイル、デザイン、裁断、縫製、刺繡、その他の技術的側面の変化や進化も反映しています。
これらは上海のビーチで生まれた最も美しい婦人服、特にドレスとしての長いチャイナドレスです。これは伝統的な中国のチャイナドレスの革新に成功し、かつては国の女性のファッションの新しいトレンドを導きました。
この種の上海スタイルのチャイナドレスは、東洋と西洋の両方で伝統的かつ現代的であり、西洋の仕立て、生地、そしてマッチングを備えており、女性が探しているものです。
上海の有名人はつねにファッションを追求するペースセッターであり、上海は中国で最もチャイナドレスを着ている女性のグループを生み出しています。
彼女たちは中国のチャイナドレス文化の新しいトレンドをリードするだけでなく、世界への進出にも成功しています。国際的な接触において、中国の女性の魅力とスタイルを十分に示しています。彼らは上海スタイルの服の進化を促進しただけでなく、中国の女性の国際的なイメージを豊かにしました。
さまざまな複雑な理由により、中華民国のチャイナドレスの間に本土に滞在した有名人は不死鳥になりました。 これらの60のチャイナドレスのほとんどは、米国、日本、カナダ、シンガポール、その他の国、および香港、中国から来ています。それらを入手するのは簡単ではありませんでした。
これらの女性のチャイナドレスを集めるために、私たちは幸いにも長年を捧げてきました。 幸いなことに、上海の有名人とその子孫から強力なサポートを受けており、心から感謝しています。
私たちは、この価値ある仕事を継続することを決意しており、社会のあらゆる分野からの強力な支援を得ることを期待して、中国国家の衣装を救出し、収集し、保存し、研究するために絶え間ない努力を続けます。
著者インタビュー(宋路霞さん)
「宋路霞:藏旗袍写名媛(图)_藏界人物_新浪收藏_新浪网」に本書の著者である宋路霞さんがインタビューに答えています。
邦訳します。
Q:どうやってコレクションの道に進みましたか。
A:家族史を書いていて気づいたのは、海派のチャイナドレス(海派旗袍)は綺麗なのに大切にしていないということ。
Q:最初の所蔵品は何ですか。
A:香港でもらった盛宣懐家と李鴻章家のチャイナドレスです。
Q:お気に入りのコレクションは何ですか。
A:どれも好きです。
Q:あなたの「コレクションの道」は何ですか。
A:セレブのチャイナドレスをコレクションすることです。
Q:主にどのような経路で所蔵していますか。
A:直接にチャイナドレスの所有主やその親友を通して集めます。
Q:自分がどのくらい所蔵しているか知っていますか。
A:100着以上のチャイナドレスを所蔵しています。
Q:自分はコレクターだと思いますか。
A:いいえ、思いません。
Q:コレクションの醍醐味は何だと思いますか。
A:嫌だけど、義務です。
Q:所蔵中に偽物はありますか。
A:どれも来歴がはっきりしています。
Q:いつか所蔵品を手放したり、寄付することはありますか。
A:設立準備中の上海セレブ旗袍所蔵館(上海名媛旗袍珍品收藏馆)に置きます。https://collection.sina.com.cn/cjrw/20150128/1452177841.shtml
100着をもっている程度なら収蔵家(コレクター)といわないと仰っているのがクールです。
最終的には博物館(所蔵館)へ寄贈するとのこと。
日本のチャイナドレス・コレクターたちに1000回は書き写してほしい台詞です。
宋慶齢の生誕125年を記念した旗袍展覧会
2018年、宋慶齢の生誕125年を記念した旗袍展覧会があったそうです。
最近の情報をフォローできていないのが残念ですが、オーストラリアで旗袍のお店をしているミランダさんが、この展覧会の様子を英語で書かれています。「Discover the Soong Sisters’ Qipaos: an Exhibition of the Soong Family Dresses」をご覧ください。
ここに紹介したカタログの概要、および登場旗袍や元所有者の写真などをコンパクトにまとめた中国簡体字のブログは「海派旗袍文化经典著作:《上海名媛旗袍宝鉴》 – 海派档案」です。
名媛系の旗袍でいえば、こちらもオススメです。
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