中国語の上衣・下衣とワンピース・ツーピース

定義と研究
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先月、知り合いの日本語教師の先生から教えてもらった優しい国語辞典。

中学生用や高校生用や大学生以上用をいろいろと教えてもらいました。

私自身は勢いで話したり書いたりすることが多いので、かなり優しい辞典がいいと思って、中学生用を買いました。

先生がお勧めされたのは、三省堂の『例解新国語辞典』第十版です。

漢字辞典じゃないのに書き順まで載っているし、意味の種類を押さえているので読みやすく、また例文がそれなりにくっついています。

林四郎監修、篠崎晃一編修代表、相澤正夫・大島資生編著『例解新国語辞典』第十版、三省堂、2021年。

国語にかぎらず、中学校で学ぶ教科書すべてを例文と考えて、教科書密着型辞典として刊行されています。これがウリのようです。

書店で手にとって、帯の裏を見た瞬間に私が驚いたのは次の写真。紫の吹き出しを入れたとおりです。

「下衣」が中学校教科書に載っていたため、この国語辞典にも掲載されました。国語辞典では下衣まで載せるのは珍しいことです。林四郎監修、篠崎晃一編修代表、相澤正夫・大島資生編著『例解新国語辞典』第十版、三省堂、2021年。

「下衣」が中学校教科書に載っていたため、この国語辞典にも掲載されました。ファッション辞典ならともかく、国語辞典では下衣まで載せるのは珍しいことです。違う専門の先生からのアドバイスが私の懐に入ってきて、胸騒ぎがしました。

この経験をきっかけとして、このページでは、上衣と下衣やワンピースとツーピースに関わる中国語をまとめてみます。

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中国語の上衣・下衣とワンピース・ツーピース

上衣と下衣

さっそく『例解新国語辞典』第十版をもとに、衣服の中国語を整理します。

出典元は林四郎監修、篠崎晃一編修代表、相澤正夫・大島資生編著『例解新国語辞典』第十版、三省堂、2021年です。

  • 上衣…「上半身に着る衣服」。対語に「下衣」。(『例解新国語辞典』第十版、567頁)
  • 下衣…家庭科教科書に載っていたようで〔家庭〕マークつき。「下半身に着る衣服をまとめていうことば」。対語に「上衣」。ちなみに、アクセントは前にあって「イ」。(『例解新国語辞典』第十版、175頁)

少し本質的な問題があります。上半身はどこまでか、下半身はどこまでか。ただ、今回は、ほぼ一番外に着る服(アウター・ウェア)を想定して話を進めます。

キャミソールやブラで外出したら、これは上着かとか、上半身を覆っていないよとか…。下半身を書きだすとアダルト・サイトみたいになってくるので書きませんけど、とにかく衣服ってややこしいですから…。

貫頭衣

それでは、中国服装史や服飾史などの本では、どんな言葉が出てくるでしょうか。

服の未熟な段階では、上衣と下衣を縫い合わせていない、丈も短めなのが貫頭衣。「かんとうい」と読みます。

古今東西、ワンピースのベテラン代表格です!

横を少し縫ったくらいの粗い縫製。生地は織物だったり、動物の皮を剥いだ皮革だったり…。

もとはワンピースと考えられますが、各地の歴史や服装によってツーピースにもなりました。

ワンピースとツーピース

中国の戦国時代、かなり裁縫技術が高くなりました。

上衣と下衣を縫い合わせたワンピースの代表格を「深衣」といい、上衣と下衣を別々のものとして着るツーピースの代表格を「胡服」といいました。

深衣の場合の縫い合わせた上衣と下衣について、上衣はそのまま上衣ということが多いですが、下衣はスカートなので下裳とよくいいます。上下を合わせて上衣下裳、略して衣裳となるわけです。しかし、縫合されています。

他方、胡服のような上衣と下衣を分けたまま着るツーピースはどうなるかというと、胡服はズボンが多かったので上衣下褲となります。褲(裤)は日本語では袴、つまりズボンです。

しかし、上衣下褲もあれば、上衣下裳もあったわけで、ツーピースでも上衣下裳になっちゃうんですね。ワンピースで上衣と下衣を縫合していても上衣下裳ですから、この点が少しややこしいです。

そして、ワンピースとツーピースは、別のいい方では、次のようになります。

  • ワンピース…上下連属、衣裳連属制、上衣和下裳相連。
  • ツーピース…上衣和下裳(上衣下裳)。

このように、ワンピースとツーピースを区別しています。ただ、上衣下裳という言葉だけは《たぶんツーピースの意味で使っているだろう》という風に考えるのが無難です。

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結論

この記事では、三省堂の『例解新国語辞典』第十版も参照しながら、中国語の上衣・下衣とワンピース・ツーピースをまとめました。

衣裳連属の場合、袍服の作り方を説明している中国語文献には「袍分上衣下裳両部分」といった文章が出てくることがあります。

これは、袍服をつくるとき、上衣と下裳に布を分けるといった意味です。後で縫合するのですが、裁断上は上下を分けるということですので、誤解されませんようご注意ください♪

なお、深衣やその発展形は次の記事にまとめているので、ご参照ください。私自身、まだ上手くまとめられていないので一部に重複する記述があると思います。

古代の深衣や袍服をみたところ、チャイナボタンのような留め具ではなく、たぶん帯締めなんだろうと思うと、やはり深衣や袍服を旗袍の原型とはいえない点を次に述べました。明代や清代の袍服を見る必要があります。

古代の深衣や袍服には立領がなく、チャイナボタンもありません。この点から深衣や袍服を旗袍の原型とはいえない点を次に述べました。

袍が漢代に一種の普段着として定着しました。パイピングをもっていた点に裁縫技術の早熟さを感じます。

ただ、漢代の袍には立領と大襟があったものの、スリットとチャイナボタンの存在がわかりません。

また、衫が唐代に立領、またはその原型となる円領になり、大襟にもなった点も覚えておきたいところ。

ただし、スリットとチャイナボタンの存在がわからないのは、袍と同じです。

日本語に「映画衣裳」という言葉がありますが、これは間違いです。「映画衣装」が正解。

日本の映画業界って変な踏ん張りが入って日本語を間違う典型的な業界例なんです。他にもテレビの「制作」にたいして「製作」を当てはめてしまうとか…。

作品といっても商品なんですから、テレビにしろ映画にしろ、「製作」の方が正しいのですが、対立項をもってこないと成り立たない業界だったんですね。

定義と研究
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この記事の著者
ぱおつ

旗袍好きの夫婦で運営しています。ぱおつは夫婦の融合キャラ。夫はファッション歴史家、妻はファッションデザイナー。2018年問題で夫の仕事が激減し、空きまくった時間を旗袍ラブと旗袍愛好者ラブに注いでいます。調査と執筆を夫、序言と旗袍提供を妻が担当。

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コメント

  1. ぱおつさんは中国語の文献も解読できるのですね〜素敵です!私も読めるようになりたくて中国語勉強始めましたが道のりは長いです。

    • どの言語でもそうですが日常語と専門用語は分けた方がいいです。
      日常語が読めるからと言って専門用語が読めるわけではありませんが、逆もそうです!中国服装史の日本語訳を一冊をお勧めします。専門用語を少しずつ知っていくと意外と専門書は読みやすいですよ。
      https://qipao.news/chinese-costume-history-qipao-4891745886/
      ざっくりとした本ですが日本語に無理やり訳さずに中国語の名詞を残してくれてるので日本語でも中国語でも考えやすくなります。そして、とにかく古代から現代まで扱っていて、1冊で5千年とは無謀なんですけども、ソフトカバーで結構安いです。あれ、5千年といば、いももさんも持ってらっしゃいました。著者は違いますが。私の紹介したのは買わなくていいです(笑)。

      • おはようございます。おすすめありがとうございます!確かにおっしゃる通り、中国語の日常会話にはまず出てこない言葉ばかり見かけます。
        私の持っているのものは装飾史なため、服飾となるとカテゴリの一つになってしまうのであまり詳しく書かれていないんです。これ気になるなぁ、古本で5,000円なら買いですね!

        • おはようございます。今 Amazon を見たら5000円弱でした。これは高いです。新刊を探してみてください!これに5000円はもったいないすぎる!

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