「中国服で頭がいっぱい!」のaraiさんと、中国服と旗袍と漢服について、あれこれお話していました。
衣服は形態と言葉がズレやすいので、二人とも混乱(笑)。
チャットをとおして手さぐりで中国服の種類について追及しました。このページでご紹介するのは、その格闘記録です!
ビックリマークや顔文字は消して、読点を適時。それ以外はほぼ弄っていません。
老旗袍のポスターから対襟の旗袍をどう考えるか
ぱおつさん、こんにちは!執筆されている旗袍的新故事、読ませていただきました。
今私も旗袍の定義がごちゃごちゃになっており、歴史を調べれば調べるほど、今私が好きで集めているような中国服は旗袍と呼べないのでは…?と感じるようになりました。
物によりますか、前開きのものや上衣下裳が多く、ぱおつさんが定義する4つのポイントを抑えてなかったりします。
ただ刺繍や裾のパイピングは清朝時代に旗女が着ていた旗袍のエッセンスがあると思うと、ますます混乱してきます。笑
ぱおつさんだったら私が着ているような中国服をなんと呼ばれるのかなと思って、ご連絡してみました…!
araiさん、こんばんは。ブログを読んでいただいてありがとうございます。
改めて調べなおしますが、araiさんの持ってらっしゃるチャイナ服(中国服)は、おっしゃる通り前びらき(対襟)になっていて、厳密に言えばそこがチーパオじゃないです。
一番最近アップされたものでしたら、①横にスリットあり、②立領(スタンドカラー)③チャイナボタンあり。の3要素があります。
ただ④大襟じゃなくて対襟にこだわれば、漢服の印象です。
漢服ですと、歴史的・理屈的には、ヨーロッパの接袖(セットイン・スリーブ)を導入していませんから、平肩連袖か斜肩連袖のいずれかになります。araiさんの中国服(中華服)もだいたい、連袖になっています。
ただ、私自身勉強不足で、清の時代の漢服をちゃんと調べてません。
満州族の影響でパイピングや装飾がかなり太くなったりド派手になっている可能性はあると思います。少しその辺を調べてみますね。
早速のお返事ありがとうございます。
たしかに私も清朝の満洲族の衣装ばかり見ていて漢服は見ておりませんでした。
清朝から中華民国になったときにお互いの民族服のエッセンスが混ざったような服が流行ったというのは本で読んだのですが、まさにそんな感じなのですかね…。
私も自分で歴史をもっと掘っていこうと思います。
お写真を見直していたら『中国五千年 女性装飾史』という本に目が行って、この本は初めて知りました。
ファッションの歴史の本は書くのが難しいので、読者はもっと混乱すると思います。服の歴史というと、①服という現物、②その服を着た人の社会的な状況、例えば女性の地位とかそういった話の両方があるあります。
服の形だけの歴史を言うと多分10ページぐらいで終わるので、そこに女性の地位や、ビジュアル的な表情や装飾品や携行品とかそんなんも色々あーだこーだと書いていくと、だんだん服から離れて行きます。でもその方がよく読まれるし、売れるんですね。そして読者は服をわかった気になって服が見えていなかったという悪循環になります。
それ!すごく思っていました。
私は学生時代に食べ物の勉強をしていたので、歴史や服飾史は本当最近勉強し始めました。当然社会的な歴史を知るのも大切だとは思うんですが、それだけじゃイマイチ当時の人たちがどういう想いでその服の形にしたのか、刺繍にしたのかとか伝わりづらいなぁと思う部分もあったり…すみません、話しすぎました。
いえいえ、どんどんお気軽に話してくださいね。少子化とコロナで大学の仕事が減ってるので、こういう話をする機会も最近は全然ありませんから嬉しいです。
良かったです。私も身近にはこの話できる人がおらず、永遠の謎だったのですごく嬉しいです!ぱおつさんのブログ、すごく読み応えがあって楽しいです。これからも楽しみにしております。
民族衣装の本を見ました。満族の宮廷服や伝統服に真ん中の割れている対襟の服もあったみたいです。ただこれらのイラストでは男性が対襟になっていて、女性はすべて大襟てす。満族女性と旗女が対襟を着ていたのか一応調べてみますね。
こんばんは。今日はこんなのを見つけてしまいました。
おはようございます!ひゃ〜サイケな色!そして対襟だ!これはいつの時代のものなんですか?
本当にどんどんわからなくなってきます。昨日中国女性装飾史見てみましたがやはり清代旗袍は大襟しか載っておらずでした。
清の旗袍は大襟は定番かと思います。ただ逆に漢族が対襟のままチーパオの真似をしていたとしたら、室内の写真などで出てくる可能性がなきにしもあらずです。写真となれば清末期しかなくて満漢合壁のあるあるという話にもなりがちですが。
サイケという感想はありがとうございます。ちょっと忘れていた単語を思い出させていただきました!
会話を終えて
流行っている漢服も旗袍と同じように、誰もきちんと定義していません。
着る方は定義の義務はありませんが、メディアや研究者がこれを鵜呑みして適当な言葉で形容するとしたら、後の時代に混乱を招きます。来るべき混乱は、近代を処理できない現代からみて、簡単に予想できます。
araiさんが注目してくださった「旗袍を構成する4つの要素」を次にまとめてます。
旗袍の構成要素
旗袍の形が清朝期からどれほど変化しても、変わらなかった点があります。これを普遍的な要素といいます。
旗袍の構成要素は次の4点。チャイナドレスの特徴です。
最近では、4つ目のチャイナボタンを横ファスナーに代替することが増えています。
また、大襟を装飾にして着脱を後ろファスナーにしたものが増えています。
ただ、インターネットで調べると、現状がよく見えてきました。
旗袍の構成要素のうち、立領、チャイナボタン、スリットの3点を備えた対襟の衣服を長衫・旗袍と明記して売っているお店が世界中にあります。
オンラインショップの商品名って、タイトルが酷いですよね。
検索結果に入るために、似た言葉をぶち込んでいくんです。アマゾンでもこんな商品名が溢れかえっています。
真面目に訳してみます。
冬のドレス女性用2020年、プラスサイズのオリエンタルなドレスで赤色、ハイカラーな長袖の長衫旗袍で、エレガントなチャイナドレスのFF2503。https://www.aliexpress.com/i/4000835027809.html
いったい、何を売っているのでしょうか…。
まぁ、ファッションの広告文句が崩壊しているのは、1960年代にフランスの哲学者ロラン・バルトが指摘したこと。日本のアパレル業界やファッション業界でも同じように、日本語を崩壊させてフレーズや商品名を作っているんですけどね。
そりゃそうと、araiさんのご紹介に移ります♪
araiさんについて
私がaraiさんを知ったのはインスタグラム。中華服を買っては着て、いろいろお写真を載せていらっしゃったので、こちらも楽しく拝見していました。
拝見中に、なんとクレア・ロバーツの書いた本がさりげなく床に置かれているのを発見。喜んで絡ませていただきました。
Claire Roberts, ed., Evolution and revolution: Chinese dress 1700s-1990s, Powerhouse Publishing, 1997.
あ、これの書評を書いてない…。近々、書きます。
とにかく「中国服で頭がいっぱい」の楽しいaraiさん。これからもビンテージ中国服のコレクションに邁進されるとのこと。
arai(@a191772) • Instagram写真と動画
彼女のインスタグラムはこちらです。イカツイ龍の中国服や清朝期旗袍の派手な刺繍パイプング風のガウンなどが賑やかです。
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