このイラストは杭稚英の描いた、晴雨牌インダンスレン広告(晴雨牌陰丹士林布)です。
カレンダー・ポスターかは判別できません。インダンスレン染料が旗袍の広告によく出たのは1930年代です。また、かなりラフな旗袍が描かれているので、これも含めると1930年代のポスターかと推測します。
インダンスレン染料は当時の流行インクで、これに染め上げた旗袍は数知れず。いちおう、いくつかの色がありましたが、よく使われていたのは濃い藍色のインダンスレン。
ただ、今回ご紹介する2つのポスターは、モデルが同じで、当時のものと現代に再生したらしきものが1つずつで、それぞれインダンスレンの藍色が違っています。二つのインダンスレンの濃淡をお楽しみください。
晴雨牌インダンスレン広告(杭稚英)のシンプルな旗袍
この旗袍は無地の水色です。袷(二枚重ね)のお掃除旗袍です。
袖はノースリーブなので、連袖とも接袖ともいえるし、いえませんし。
旗袍の構成はかなりシンプル。
刺繍がなく、藍色のパイピングが細くて、チャイナボタンは大襟に一つ。立領は5cmくらいの高さで、小さいブローチかホックで留めているみたい。
スリットは膝丈あたりまでで、脚を組んでいるので、後ろ側のスカート部分は床についています。
裏側の白地は袷の布と思います。垂れ下がったスカート部分の青地の方の皺(シワ)の寄り方と白地の方の寄り方が違うからです。
裾引きしそうなお掃除旗袍なので、当時としては高いハイヒール・パンプスを履いています。青色のパンプスは旗袍とマッチしています。
実物と違う点は、大襟が腋窩でおわっています。ふつう、このおわりから、右わき腹を経てスリットまで、開閉部分か切れ目や縫い目があるのですが、このイラストでは描かれていません。もちろん、右身頃を留めるチャイナボタンもありません。
描写精度はともかく、旗袍のデザインがかなりカッコいいと思いました。自信にみなぎった眼力もステキ。
装飾では、お腹に乗せたピンクの花が旗袍の青とコントラストを作っています。この花は後に飾っている大型の生け花からもってきた一つでしょう。
髪はショートのパーマ。おでこを見せて、両サイドに髪をもってきています。天辺を結っているのが可愛いです。
『老旗袍』より別バージョンの藍色旗袍
ついで、『老旗袍』より別バージョンの藍色旗袍。靴は赤紫色になっています。
加工再生か、オリジナル段階で別バージョンだったか…。署名の位置は全く同じですので、加工再生?
こちらの旗袍と靴の配色は、先にみた配色よりもマダムな感じ。同じイラストでも年齢が跳ねあがりますね。ピンクの頬紅が後退しているのも理由の一つ。
『老旗袍』は鮮やかに再生したイラストが多く、見ていて疲れないし、楽しいです。ただ、インダンスレンの広告を紹介しまくっていて紺色旗袍に疲れているので、今回ご紹介した1モデル2種のイラストでは1点目の方が新鮮でした。
インダンスレン布を使った旗袍
インダンスレン染料を使った生地は、1930年代に学生服や制服、それに日常用の旗袍にまで広く使われました。
カレンダー・ポスターにも、この趨勢は反映しています。インダンスレン布に関する記事リストを次の記事にまとめているのでご参照ください。
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